「ことば」の音から意味を連想する音象徴の性質~キラキラ・ギラギラ~顧客の感性に働きかけるコミュニケーションやネーミングにも役立つ

公開日:2024年08月06日最新更新日:2024年08月09日JMLA 事務局

私たちが人に何かを伝えるとき、自分が表現したいことが伝わる「ことば」を選んで会話をすることがありますね。例えば、「(気持ちが)ワクワク(弾んでいる)」、「(雨空の日に)ジトー(好ましくない)」、「(太陽が)ギラギラ(暑すぎる)」、「(太陽が)キラキラ(すがすがしい)」などです。

今回は、「ことば」の音の響きから受ける印象が違うことをテーマに、マーケティングに活用するメリットを考えたいと思います。

「音象徴」(おんしょうちょう)とは

「音象徴」とは、音そのものが連想させる意味のこと。
「音象徴」は英語ではsound symbolismになりますが、これは「音から意味の連想が直接起きる現象」のことを言います。
音象徴の研究で有名なのは、Wolfgang Köhlerが1929年に行った研究です。
出典:「旅する応用言語学:音象徴とは何か:タケテ/マルマ効果・ブーバ/キキ効果」

「音象徴」とは、「音によって喚起される特定のイメージ」
出典:「音象徴の言語学教育での有効利用に向けて―ウルトラマンの怪獣名と音象徴―Journal of the Phonetic Society of Japan, Vol. 21 No. 2 August 2017, pp. 43–49 Shigeto KAWAHARA and Tomoko MONOU」

「音象徴」とは、音と語があらわす意味との間に、強い結びつきがあることです。
出典:「感性AI:2024年度 人工知能学会全国大会(第38回)で発表【内容を説明】」

具体的に、「音象徴」とはどういうものか次項でみていきましょう。

言語の恣意性と音象徴

「⾔語の⾳と意味の関係」ということについて考えてみましょう。

ここから6つの項は、感性AI社(弊協会は同社製品である感性AIアナリティクスの販売代理店)が紹介しているコラム(※)から引用または参照した内容を、みなさんにご紹介します。
(※)2024年度 人工知能学会全国大会(第38回)で発表【内容を説明】

言語の恣意性(しいせい)とは 

言語の音と意味の間に必然性を持たない性質のことを「言語の恣意性」と呼びます。

例えば「夜」という⾔葉は、「よる」という⾳で構成されますが、それと「⽇没から⽇の出までの時間」という意味との間に何らかのつながりはあるでしょうか。

そこにつながりは⾒出せず、⽇本語でたまたま昔からそのように取り決めて発⾳しているということに過ぎません。

このように⾔葉の記号(⾳)と意味との間に必然性を持たない性質のことを「⾔語の恣意性」と呼びます。

言語の音象徴(おんしょうちょう)とは

定義は冒頭の項「「音象徴」(おんしょうちょう)とは」をご参照ください。

⼼理学研究において、下図のような2つの図形を被験者に⽰し、どちらが「ブーバ(Bouba)」でどちらが「キキ(Kiki)」であるかという質問すると、⾼い確率で以下のように回答することが分かりました。

この実験は、⾔語⾳と図形に何らかの関連性があることを⽰しており、ブーバ/キキ効果と呼ばれます。

ブーバ/キキ効果は図形の場合ですが、このように⾔語⾳が特定の感覚を想起させる現象のことを⼀般に「⾳象徴(おんしょうちょう)」と呼びます。

なお、⾳象徴はこの実験の通り、オノマトペに限らず⼀般的に当てはまる現象だといえます。
しかし、オノマトペはこの⾳象徴性の⾼さが⼀番の特徴だといえるでしょう。

参考: Ramachandran, V. S., & Hubbard, E. M. (2001). Synaesthesia–a window into perception, thought and language., Journal of consciousness studies, 8, No. 12, 2001

「ゴロゴロ」と「コロコロ」というオノマトペはどんな印象? -音象徴の性質

例えば、重くて大きい物が転がるさまをあらわす「ゴロゴロ」、軽くて小さい物が転がるさまをあらわす「コロコロ」というオノマトペがあります。

2つを比べると「ゴ」と「コ」、つまり濁音と清音で違いがありますね。

ここから

濁音には「重いイメージ」・「大きいイメージ」

清音には「軽いイメージ」「小さいイメージ」

があるとわかります。

このようにオノマトペの多くには、音象徴の性質があります。

音象徴は人間の身体による感覚がもととなると言われています。音を聞いたときに持つ感覚や、音を言ったときに持つ感覚が、その音に持つイメージのもととなっていると言われているのです。

人間の「キラキラ」「ギラギラ」に持つイメージ -音象徴の性質

「キラキラ」と「ギラギラ」はどちらも、明るく光り輝くさまをあらわすオノマトペです。みなさんはどちらに良いイメージを持ちますか?

既存研究(※)によると、無声子音(キラキラなど)のほうが有声子音(ギラギラなど)のオノマトペより良い印象を持つことが多いとわかっています。

つまり「キラキラ」のほうが「ギラギラ」より良いイメージを持ちやすいです。

次の例を見るとわかりやすいかもしれません。

「星がキラキラ光る」は優しく綺麗に輝くイメージ【良いイメージ】

「太陽がギラギラ光る」は眩しく不快に光るイメージ【悪いイメージ】

(※)[Iwasaki 07] What do English speakers know about gera-gera and yota-yota?: A cross-linguistic investigation of mimetic words for laughing and walking [Pantcheva 06] 日本語の擬声語・擬態語における形態と意味の相関についての研究

身体を持たないAIは音象徴を持つでしょうか?

感性AI社の研究発表から、AIも人間と同じように「『ギラギラ』より『キラキラ』のほうが良い印象」という情報を持つとわかりました。

詳細はこちら:「感性AI:2024年度 人工知能学会全国大会(第38回)で発表【内容を説明】」

音象徴の研究は将来どう活きる?

AIを対象とした音象徴の研究が進むと、AIが人間の感性を理解したように振る舞える可能性があります。

この研究はコミュニケーション分野やクリエイティブ分野での応用が期待できます。

コミュニケーション分野

研究が進むと、ユーザに寄り添った対応をAIができる可能性があります。そのため寄り添った対応が求められる業務、例えばコールセンター業務、UXライティング(※)業務などで活用できる可能性があります。

(※) UXライティング……ユーザにとってわかりやすく、心地の良い文章を書く技術

クリエイティブ分野

研究が進むと、AIが人間の感性に沿ったものを作れる可能性があります。例えばネーミングやキャッチコピーです。与えたい印象を決め、AIがそれに沿ったネーミングやキャッチコピーを生み出すといった活用が期待できます。

音象徴の研究は将来どう活きる? 『感性AIアナリティクス』への活かし方

『感性AIアナリティクス』には「音韻感性評価」機能があります。

この機能ではオノマトペなど、ことばの音の響きに持つ印象がわかります。

身体を持たないAIにも音象徴の情報を持つことがわかった調査結果を、今後、『感性AIアナリティクス』へも活かせる可能性があります。

例えば印象項目を増やすことです。

調査の結果から、「幸福ー不幸」「清潔ー不潔」「ぼんやりーはっきり」など、『感性AIアナリティクス』にはない印象項目の結果がわかっています。

これまでの(AIにおける音象徴の)調査に加えさらに調査を深めることで、印象項目を追加できる可能性があります。

また『感性AIアナリティクス』には、文の意味的な印象から評価をする「テキスト感性評価」機能があります。

「音韻感性評価」は音象徴的な特徴、「テキスト感性評価」は単語や文の特徴を使っています。

そのためAIにおける調査により、それぞれの得意な点を理解して適切な利用シーンを判断できる可能性があります。ただし、応用できるようになるまでには、さらなる調査が必要です。

「ことば」の音の響きから受ける印象をマーケティングに活用するメリット

ひらがなで「ふわふわ」、カタカナで「フワフワ」と書いた際、印象は変わりますね。

私の印象は、

●ひらがなで「ふわふわ」・・・柔らかく 空気がたくさん含まれる ふわっとした綿菓子のような印象

カタカナで「フワフワ」・・・「ワクワク」と読み間違えてしまう印象

みなさんはどのような印象を抱きますか?

ちなみに、「ワクワク」というオノマトペは、明治以前は気持ちが乱れて落ち着かない様⼦を表していたそうです。時代によって「ことば」の意味、音の印象は変わります。

マーケティングにおいては、例えば、商品のネーミングによって良い印象を与えるかそうでないか影響が出ます。与える印象をポジティブなものにするためには、調査は欠かせないでしょう。

マーケティング調査の留意点と使い分け

マーケティング調査の中で以下のような2つの視点があります。

1.ニーズ全体を俯瞰し方向を決めたいという調査と

2.具体的な対象が決まっていて仕様などのディテールを決めたいために行う調査

今回のテーマのように「ことば」の「キラキラ」と「ギラギラ」はどちらが良い印象を受けるか/与えるかといった印象評価は、上記2番の調査が該当します。

上記1のように、ニーズの全体を俯瞰する調査は、AI評価ではできません。

また、AIを用いなければ2番の調査ができないわけではなく、目的と用途により、従来の調査においても充分満足できる結果が得られます。

上記1番と2番の違い(特徴)を、ここでおさえておきます。

特徴をとらえやすいように次のそれぞれに焦点をあて、

・2番「ディテールを決める調査」における「AI調査」の特長、
・1番「ニーズを俯瞰的にとらえ戦略を決める調査」における「インターネット調査」の特長

を挙げます。

2番の「ディテールを決める調査」における「AI調査」の特長

データ処理能力:

AIは膨大なデータを迅速に処理し、パターンやトレンドを分析する能力があります。これにより、マーケティング調査で集めた具体的なデータを効率的に解析し、仕様の詳細を決めるための洞察を得ることができます。

パーソナライズ:

AIは個別の顧客データをもとに、パーソナライズされた提案を行うことができます。これにより、ターゲットとなる顧客層のニーズや好みに基づいて製品やサービスの仕様を調整することが可能です。

予測能力:

AIは過去のデータをもとに未来のトレンドや需要を予測する能力があります。これにより、新製品の仕様や機能が市場でどのように受け入れられるかを予測し、より精密な仕様決定をサポートします。

反復的な分析:

AIは何度も分析を繰り返し実施できるため、仕様の異なるバージョンをシミュレーションし、最適な仕様を見つけ出すことができます。これにより、細部までAI評価に基づいた製品開発が可能になります。

1番の「ニーズを俯瞰的にとらえ戦略を決める調査」における「インターネット調査」の特長

一方で、マーケティング調査によるニーズの全体俯瞰については、直接的な人間の洞察が必要とされることが多いです。大規模な俯瞰調査では、文化的背景や社会的動向など、AIが捉えにくい要素を含むため、人間の専門家による分析が重要です。

広範なデータ収集能力:

インターネット調査は多様な人々から広範なデータを集めることが可能です。地理的な制約が少なく、多くの参加者を短期間で募ることができるため、マーケット全体のトレンドやニーズを包括的に把握できます。

コスト効率:

大規模なサンプルを収集する際、従来のオフライン調査よりもコストを抑えることができます。これにより、限られた予算内で広範なデータを取得し、ニーズ全体を俯瞰することが可能になります。

スピードと柔軟性:

インターネット調査は迅速に実施でき、調査内容を容易に変更することができます。これにより、市場の動向や競争環境の変化に素早く対応し、方向性を決めるための適切な情報を得ることができます。

トレンドのリアルタイム把握:

インターネットを活用することで、リアルタイムでのデータ収集が可能となり、現在のトレンドや消費者の関心事を迅速に把握することができます。これにより、ニーズ全体をより正確に捉えることができます。

多様な調査手法を活用し、それぞれの特徴を理解することは大事です

今回の記事のテーマは、「ことば」の音の響きから受ける印象が人によって変わることを話題にしました。

人によって評価が変わるということは、自社の商品を伝える「ことば」の使い方に注意しなければならないということです。そのためには、どのような「ことば」が顧客・ユーザーの心に響くのか、調査することはとても大事なことといえます。

インターネット調査が普及した現在では、さまざまな調査手法の特徴を理解しながら、いくつかの調査手法を組み合わせることが増えています。

まとめ

「ことば」の音の響きから、「人の感性によって受け取るイメージが変わる」ということは、商品の売上にも影響します。

「ことば」の意味は、時代によっても変わります。また、ひらがな表記かカタカナ表記、あるいは、漢字やローマ字など、表現方法によっても印象が変わります。

商品を顧客に届ける際のコミュニケーションでは、「ことば」が欠かせません。「ことば」の意味、音、表記方法などより深く考え、より良いコミュニケーションを目指したいですね。

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