ウェブメディアよりも効果があった、アナログPRが行列を作る「“焼きそば”と書いた赤い旗」

公開日:2022年05月25日最新更新日:2022年05月26日堀内香枝

ITの進化により、現在飲食業界の広告宣伝はWebにより行われるのが当たり前になっています。
残念ながら諸般の事情で閉店してしまったようですが、下北沢にあった焼きそば店のお話です。

行列ができるまでになった理由を理解し、閉店してしまった理由を推測し、そのことを自分自身の仕事に活かすためには、マーケティングの基本を理解する必要があることに気が付かされます。

「赤い旗を振ることにより、行列が生まれた焼きそば店」顧客の創造

この焼きそば店は、ご多分に漏れず開店当初は閑古鳥が鳴く状態だったそうです。
脱サラした若い店主だったので、様々なウェブメディアを利用して宣伝を行っていましたが、結果は思わしくなかったようです。

暇を持て余し、なにか目立つことをやろうと考えたのが、2階で「焼きそばと書いた赤い旗」を振ることだったのです。

これが思いのほか注目を集めることとなりました。
店の立地が踏切のそばで、更に店の前の通りもカーブしており、遠くからでも目に入りやすいという人目を引くパフォーマンスを行うには格好の場所だったのです。
赤い旗は目立ち、今どきの若い人の中には動画を撮る人まで現れたそうです。

この一見前近代的アナログ手法の効果により、話題を呼び行列ができるまでになったそうです。

ここにマーケティング上の大きなヒントがあります。

自社・自店のターゲットは誰か? 基礎マーケティング思考でSTP・4Pを見直す

まず、自店のターゲットは誰なのかということです。

もちろん、今は情報化社会で話題になった店があれば遠くからでもやってきてくれるお客もいるでしょう。しかし、小さな飲食店にとって何度も高頻度でリピートしてくれるのは近隣のお客です。

そのような近隣のお客候補に効率よく宣伝できるのはアナログ的な手法だということです。

    

        

Webメディアは広く多く人々に瞬時に情報を届けられます。
しかし、町の飲食店にとっては、Webメディアを受信する多くの相手は、自店のお客さまにはならないということです。
 
同じような悩みをお持ちの企業様もいらっしゃるのではないでしょうか?

話は飛びますが、マーケティング戦略の基本フレームワークである「4P」も、その持つ意味を変化させています。
特に「Promotion」は、「Communication」と理解すると今の社会環境に当てはまりやすいです。

町の飲食店が自店を知ってもらうために、地域の人たちと、どのようにコミュニケーションをとればよいのかということを真摯に考えると、気づいてもらう手法として「赤い旗」を思いつくかもしれません。

もちろん「赤い旗」というコミュニケーション方法は、どのような店にもあてはまるわけではありませんし、食べログなどのサイトに登録されていれば、当該の町の飲食店を探す人にとっては効率的です。

あくまで自店・自社のターゲット、顧客はどのような人かを考えた上で、コミュニケーション策を考える必要があります。

   

STP(STP分析)とは
STP(エスティーピー)とは、セグメンテーション(Segmentation:市場細分化)、ターゲティング(Targeting:狙う市場・対象の決定)、ポジショニング(Positioning:自社の立ち位置の明確化)の頭文字です。 アメリカの経営学者(マーケティング論)・フィリップ・コトラーが提唱したフレームワーク(考え方の枠組み)で、業種や商材などを問わず活用できます。

     

4P(4P戦略)とは
4P(ヨンピー/フォーピー)とは、Product(製品戦略)、Price(価格戦略)、Place(流通戦略)、Promotion(広告戦略)の頭文字です。アメリカのマーケティング学者・エドモンド・ジェローム・マッカーシーが提唱したフレームワーク(考え方の枠組み)で、マーケティングミックスとも呼ばれます。

      

事業を持続させるためには、お客さまへ「常に新しい驚き」を届けることが必要

そしてもう一つ必要な考え方が、店(自社)を継続して存続させることです。

当該の店がどのような理由で閉店したのかは知りえません。コロナ過の影響が強いとは考えますが、コロナ過でも生き残っている飲食店は数多くあります。

生き残る店や企業には共通する要素があります。

それは、「常に新しい驚き」を届ける姿勢です。顧客を飽きさせない。

     

        

顧客を飽きさせない方法として、大手企業であれば、商品ラインナップの充実、新商品の連続的で高頻度の投入ということが常套手段になりますが、中小零細企業にとってはハードルが高く、その方法だけではないはずです。

小さなお店にとっては、「味を変えないで受け継ぐ」ということであるかもしれませんし、「お客さまとの接し方(接客の態度)」であるかもしれません。

先日テレビで町の小さな中華屋さんが取り上げられていましたが、その店の常連さんがこのようなことを言っていたのが、強く印象に残っています。

「食べさせてもらって、幸せな気分になって帰れるのはこの店しかない。」

     

「食べさせてもらって、幸せな気分になって帰れるのはこの店しかない。」顧客の維持

なんという素晴らしい誉め言葉でしょうか。

そこには当然食事がおいしいという基本があるでしょうが、店で働く人すべてがお客様のことを考えて働いていることがお客様の幸せ感を高揚させているのだと思います。
 
いつ来ても幸せにしてくれる、常に感動を与えてくれる。
人は理性だけでは動きません。
自分の感性を刺激してくれる何かがないと動かないのです。

それが、新しい驚きや感動なのです。

それでは、それらの驚きや感動はどのようにして生み出せるのかという質問がでるでしょう。

その答えはマーケティングの基本を学ぶことだと言い切れます。

     

まとめ

マーケティング活動の2大柱は、「顧客の創造と維持」です。

マーケティングの本質は、「顧客に価値を提供し企業収益を生む仕組みづくり」です。

それを実現する活動を行う前に、世の中の多様で複雑な情報を効率的整理し、偏りのない戦略立案を行えるようにしてくれるのがフレームワークです。

現在Web上で使える様々なツールがありますが、それらを効果的に使いこなすためにも、マーケティングの基本的で汎用的なフレームワーク「3C」や「5F」などにより事実をしっかり把握し、「STP」や「4P」を用いてマーケティング戦略を考えることは欠かせません。

JMLA(日本マーケティング・リテラシー協会)では、そのマーケティングの基本を学べる『JMLAベーシックパスポート』という講座をご用意しています。

『JMLAベーシックパスポート』とは、マーケティング理論を体系的に理解し、実務で活用できる基本フレームワークを使いこなせるようになる能力習得を目指す資格講座です。
DX(デジタルトランスフォーメーション)経営およびSDGs(持続可能な開発目標)活動を自社に取り込む考え方を包含して、マーケティングの基礎を学びます。

        

        

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女性の感性を活かした調査設計や市場動向の分析により、お客さまの深層心理「感性」の解明を得意とします。コンサルティングファームで食品メーカー、外食産業、エステティック産業、通販企業、冠婚葬祭業、工作機械メーカーなど幅広い業種のマーケティング・コンサルティング業務を経験しました。これまで培った経験を元に、一般社団法人 日本マーケティング・リテラシー協会(JMLA)設立に参画し、感性マーケティング『マーケティング解析士』講座カリキュラム策定に携わりました。現在は、『マーケティング解析士』講座の講師活動を行っています。同時に、企業様のマーケティング課題解決のサポート活動を継続しています。