顧客の本音を知る!~顧客は自分の本音を理解しているわけではない~
多くの企業が顧客アンケートを行い、自社の商品開発や施策に反映して集客や売上を伸ばす努力を行っています。
しかし、すべての施策が集客や売上を伸ばす結果に結びついているわけではありません。時には大失敗に終わっていることもあるのです。
その主な原因は、顧客の本音を把握する調査設計が出来ていなかったことにあります。
顧客自身が自分の本音を理解していないことも多いため、その裏に隠れた本音を見抜くことが、ビジネスの成功には欠かせません。
顧客の本音を理解するとはどのようなことなのか、事例をもとに学んでいきたいと思います。
目次
マクドナルドの失敗事例に学ぶ
テレビコマーシャルも活発に行い、様々な商品開発や施策を行って、好調なマクドナルドですが、今まで失敗をしたことが無いわけではありません。
「サラダマック」という商品を覚えていらっしゃるでしょうか。
2006年のことですから、覚えていない方や若い方は認知すらしていない方もいるかと思いますが、解りやすい事例なので、今回のテーマにさせていただきたいと思います。
「サラダマック」とは、チキンと野菜を組み合わせた、いわば「ヘルシーメニュー」です。
消費者の健康志向はますます高まっていますが、当時マクドナルドがお客様に対して行った調査でも、
「もっとヘルシーなメニューを追加してほしい」
という声が多く挙がったそうです。
その結果を受けてマクドナルドが開発したのが「サラダマック」だったのです。
お客様の声を反映した商品だったわけですから、当然売れるという確信を持ち販売を開始したのですが、結果は散々なものに終わりました。全体売り上げの2,3%に過ぎない売上しか稼げなかったということです。
「社会的に健康志向である」、「顧客アンケートからヘルシーメニューを望む声が多く挙がっている」のようにニーズの動向はしっかり捉えました。
顧客の健康志向に応えたはずの商品が、なぜ失敗したのでしょうか?
その答えは、顧客が抱くマクドナルドのブランドイメージにありました。
顧客は、マクドナルドに「おいしいハンバーガーやフライドポテト」を求めているため、ヘルシーなメニューには魅力を感じなかったのです。
カスタマーエクスペリエンス(顧客体験)を理解することの重要性
この事例は、カスタマーエクスペリエンス(顧客体験)※の理解がいかに重要かを示しています。
顧客は、体験を通してブランドに対する認識を形成します。
マクドナルドは「ハンバーガーとフライドポテトのおいしい店」というイメージが顧客に強く刷り込まれており、そのブランド体験を無視して新しい方向性を打ち出すことは難しかったのです。
カスタマーエクスペリエンス(顧客体験)とは
カスタマーエクスペリエンス(CX:Customer Experience)とは、商品やサービスの利用やそのブランドと接したときの顧客体験(顧客が体験して感じること)です。
経験価値マーケティングの提唱者であるバーンド・H・シュミット教授著『経験価値マーケティング』では次の5つの顧客経験価値を定義しています。
5つの顧客経験価値とは
顧客経験価値1 SENSE(感覚的経験価値)
◇顧客の感覚(五感:視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚。など)
◆審美的な楽しみ、興奮、美、満足を感覚(五感)を通して価値を感じるよう設計する。
顧客経験価値2 FEEL(情緒的経験価値)
◇顧客の内面の感情・フィーリング
◆企業やブランドに対して顧客が愛着を抱いたり、感情移入したり、ものの見方を確立したり共感したりできるように、商品・空間・人・情報を設計する。
顧客経験価値3 THINK(創造的・認知的経験価値)
◇顧客の知性
◆顧客の驚き・好奇心、挑発といった感覚を引き出すような、問題解決的な経験やクリエイティブな思考を促す経験を設計する。
顧客経験価値4 ACT(肉体的経験価値とライフスタイル全般)
◇顧客の肉体・身体、特定のライフスタイル
◆これまでとは異なる行動を起こすような体験づくり。行動パターンや特定のライフスタイルを変える経験を設計する。
顧客経験価値5 RELATE(準拠集団や文化との関連づけ)
◇個人と社会との結びつき
◆国、特定の地域・文化・グループ・仲間・企業・ブランド等に所属し、広範な社会的、文化的文脈に関連付ける経験を設計する。
顧客は自分の本音を正確に理解していないが、本音を引き出す設計から捉えられる
顧客アンケートの設計では、単に「顧客が望むもの」を聞くだけではなく、顧客が抱くブランドイメージや実際の行動パターン、体験したときの感情も考慮に入れた設問構成が求められます。
これにより、顧客の本音に基づいた商品開発や施策が可能となります。
マクドナルドが行ったアンケートに対し、お客様は自身の考えを素直に回答しただけで、ウソを回答したわけではありません。
顧客は自分の本音を正確に理解していないことや正確に表現できないことの方が多いです。
そのため、企業側が顧客の本音を分析によって把握できるように上手に設問を設計する必要があります。
顧客の本音を聴くアンケート設問づくりのポイントを、マクドナルドの健康志向メニューを題材にしながら解説します。
「どんなメニューが欲しいですか?」と問われれば、社会的にも自分自身も気になっている健康志向のヘルシーメニューが欲しいと回答するでしょう。
ですから、調査設計として、「顧客にとって、マクドナルドとはどのような存在なのか」を把握する設問と、「マクドナルドで食べたいメニュー」を突き合わせて分析できる設問設計を行います。そこから顧客の本音を理解して行きます。
行動と感情を探る
顧客が実際にどう感じ、行動しているかを理解する質問を盛り込むことが大切です。たとえば、「健康志向か?」という質問だけでなく、「どのようなシチュエーションでマクドナルドを利用するか」、「他のファストフード店と比べてどのようなイメージを持っているか」といった行動や感情に基づく質問を追加します。これにより、顧客がヘルシーな商品を本当に求めているかどうか、もしくは他の要素を重視しているかが見えてきます。
質問例:
- 「マクドナルドを利用する時、何を期待していますか?(味、スピード、楽しさなど)」
- 「健康志向のメニューが増えたら、利用頻度は変わりますか?」
- 「他のファストフードチェーンと比べて、マクドナルドに対してどのようなイメージを持っていますか?」
ブランドイメージとの整合性を確認する設問:
顧客がどのようなブランドイメージを持っているかを直接問う質問を作成します。たとえば、マクドナルドに対して顧客が「ヘルシーさ」を求めているのか、あるいは「手軽さ」や「楽しさ」を求めているのかを確認します。これにより、顧客の表面的な声と本音のギャップを発見することができます。
質問例:
「マクドナルドに来店する理由をお聞かせください。」
- ハンバーガーが美味しいから
- 安くて早いから
- 家族や友人と楽しめるから
- その他(自由記述)
顧客アンケートを設計する際の大前提は、目的を明確にすることです。何を知りたいかによって質問の内容や形式が異なります。
調査設計は「顧客ニーズの本質をあぶりだす」組み立て方が大事
調査からわかることは沢山あります。
しかし、ともすると定量的な数値で表されることばかり見て判断したり、フリーアンサー(自由回答)の設問も表層的な設問(当たり前と思ってしまう回答しか得られない設問)しか作れていないことが多いです。
それはなぜかというと、定性情報を分析する術・スキルを持っていない場合や、効率を追求しすぎてデータを探求する時間を省く場合、あるいはデータ分析(データ集計)した結果を社内へ伝えるプレゼンテーションスキルが不足しているといった要因が挙げられます。
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