感性とは、感性マーケティングとは
「ライフ」(スーパーマーケット)の店内で作られている、ピーナッツバターをご存知でしょうか?
私は、「こんなに新鮮で美味しいピーナッツバターが、スーパーで買えるの!」と感激しました。心を揺さぶるような商品やサービスに出会うと、深く印象に残ります。
この感激、感動で利益をあげる手法が、「感性マーケティング」です。
感性マーケティングとは、人に寄り添うものづくり(サービス含む)から提供、顧客との長期的な関係づくりまで、仕組みをつくり、事業の成果を持続的に実現することです。
その活動の要所において、「感性データ」や「定性データ」を活用していくことです。
この記事では、感性マーケティングの基本についてお話しています。
このようなことを考えている方、探している方に役立ちます。
・「感性」ってそもそも何?
・「感性マーケティング」って何に役立つの?
・定性データを分析できるようになりたい
目次
まずは感性マーケティングの成功事例を見てみましょう
感性マーケティングを実行すると、どんな成果(アウトプット)が得られるでしょうか。
冒頭のスーパーマーケット「ライフ」の、店内で手作りしているピーナッツバターが売れている例も一つです。
他に、コロナ禍に密を避けて楽しめることで人気になった「グランピング」が例として挙げられます。
これまでのキャンプは、大荷物を準備したり、テントを設営する必要があったり、一部の趣味人のすることと思われていました。未経験者が手ぶらで行っても、豪華で優雅なキャンプ気分を満喫できるサービスにしたのがグランピングです。
また、アイドルグループ「AKB48」の登場は、「会えないアイドルから会いに行けるアイドル」で打ち出し、大成功しました。
さらに、「ディズニーランド」は、「遊園地は子どもが楽しむ施設」という概念から、「大人が夢中になる」施設で大成功しています。
このように、感性マーケティングの最終的な成果は、ヒトの心を揺さぶる商品やサービスの成功です。
しかし、その成果を生み出すには、提供するための仕組みが必要です。仕組みづくりから持続的な運用までを一貫して行うプロセス全体が感性マーケティングです。
つまり、人間の感性に寄り添ったマーケティング戦略が、感性マーケティングなのです。
感性マーケティングの「感性」とは
「感性マーケティング」の「感性」とは、下記のように定義できます。
感性とは、人間が外界からの刺激を、感覚(五感など)で受容し、処理し表現する能力のこと。
感性の範囲
上図は次を弊会で編集したものです。
「感性工学 第16巻3号 2018年9月 感性商品研究の最前線 P125-126 図1 情報処理論心理学的な感性の情報処理プロセスと定義(出所:長沢伸也 編著:感性をめぐる商品開発ーその方法と実際ー、日本出版サービス、6,2002,図1-1を加筆)、人間の感覚受容器に伝えられた後に発生する一連の情報の流れ 感覚→知覚→認知→感情→表現 として感性を捉えることができる」
原田 昭 氏(日本のインダストリアルデザイナー、筑波大学名誉教授、札幌市立大学名誉教授、感性工学会参与)は、「感性とは、ある刺激に対して働く能動的な能力を持った働きである」と定義しています。
脳科学分野では、意識的処理ではない無意識の処理が、行動に影響する研究もされています。
このことから「感性」は無意識領域の演算といわれることもあります。したがって、「感性」を扱う領域は、完璧に解明された領域ではなく、国内でも世界でも研究が継続されている分野といえます。
無意識の中に眠っている潜在ニーズを探りたい
本人自体が認識していないもの(ニーズ)、それでも、誰もが知りたいこと。
本人自体意識してはいないが、自分の“感性”にそって言葉にしたり、行動をしているのです。
その言葉や行動の真意をつかまえられれば・・。
それができれば、顧客価値の創造ができるのではないか。
そのためには、何を、いくつ、いくらで買ったか、といった履歴情報ではなく、また、トレンドに左右されやすい表層的な発言でもなく、人の価値観や意志といった深層にある潜在ニーズの探索がとても大切になってきます。
私たちは、人の「表層的」な発言ではなく「深層心理」を探ることができるような発言を引き出すアプローチを25年以上継続してきました。
感性情報とは
では、感性情報とは、どのようなものなのか?
感性情報は、「人間が外界からの様々な形態の刺激を受信した情報」、また、「受信刺激を脳を含む体内で処理し表現した情報」で、下表が感性情報の例です。
顧客を捉える心理的変数とは
生活者や消費者、顧客を捉えるには4変数あります。
- デモグラフィック変数(人口統計変数)
- ジオグラフィック変数(地理的変数)
- ビヘイビアル変数(行動変数)
- サイコグラフィック変数(心理的変数)
(1)デモグラフィック変数
年齢、職業、所得、家族構成、居住形態など、顧客がどんな人かを大まかに知るのに役立つ情報です。定性データが多いように見えますが、お客様の姿形の概要を理解するための一般属性と呼ばれる項目が多く、最初からカテゴライズ(分類)されていて、定量的に扱われています。
(2)ジオグラフィック変数
地域、気候、地理・地勢、風土など、顧客がどのような地域環境で育ったか、あるいは、現在どのような地域環境で暮らしているかを把握するのに役立つ地理的情報です。商圏人口などエリア戦略で必要な定量データが多く含まれます。
(3)ビヘイビアル変数
訪問回数、滞在時間、検索履歴、購入商品、購入金額、スマホのGPS位置情報など、顧客の行動を知るのに役立つ情報です。ほとんどが定量データです。
(4)サイコグラフィック変数
ライフスタイル、パーソナリティ、志向性、価値観、意志、考え、意見、感想など、顧客が“なぜ”そう思うのか、あるいは、これからどうしたいのか、“なぜ”決断したのかなど、購買行動を起こす背景を知るのに役立つ情報です。ほとんどが定性データです。感性データもこの変数に含まれます。
また、化粧品などを使用した使用感や、スポーツ観戦に行った際に感じた体感なども、商品(製品・サービス)の改善や新商品開発に役立つ情報です。
感性マーケティングとは
『感性マーケティング』とは、人に寄り添うものづくり(サービス含む)から提供、顧客との長期的な関係づくりまで、仕組みをつくり事業の成果を持続的に実現することです。その活動の要所において「感性データ」や「定性データ」を活用してゆくことです。
弊会では、
- 「(人間の)感性」を起点として、企業様のマーケティング課題解決を行うこと
- アンケートの定性データを定量的に分析し事業成果に貢献する実績を25年以上積み重ねてきたこと
- 経営者やキーパーソンとコミュニケーションをとり意向をよく汲み取ることが、戦略立案において重要であること
- 経営とマーケティングは表裏一体である
これら4点を包含して感性マーケティング・サービスをご提供しています。
「感性マーケティング」のお話をすると、「定性調査」と違いますか? 感性と「インサイト」とは違うのでしょうか?というご質問を受けることがあります。
そこで、「定性調査」とは、「インサイト」とは、についてご説明します。
定性調査とは
定量調査と定性調査が対比して使われることが多いので、違いをご説明します。
<定量調査とは>
定量調査とは、収集されるデータが数値化されている調査です。
認知率、購買率、当選確率など、市場調査や世論調査、実態調査を含めた、普段みなさんが見聞きする多くの調査は定量調査です。
仮説を検証したいときに向く調査手法で、調査対象数(サンプル数)の規模は大きい方(400~2,000程度以上)が適しています。
<定性調査とは>
定性調査とは、言葉や文章、写真、動画、映像など数値化できないデータを収集目的とした調査です。
調査対象者から発せられる生の言葉や行動、観察者が見た状態や印象などを調べたいときは定性調査を行います。
一般的に知られている代表的な調査手法として「グループ・インタビュー」が挙げられます。
この他、長時間にわたって対象者を面接する「深層面接法」や、対象者の態度や行動、反応などを観察する「観察法」などが用いられています。
仮説設計しづらいときや、市場の新しい動きを発見したいときに向く調査手法で、調査対象数(サンプル数)が少数から可能です。
定性調査に関して、上記の説明が一般的です。
弊会の感性マーケティングの中の一部に、対象者の内面を探るために少数の対象者に調査する(一般的に知られている)「定性調査」は含まれます。
定量調査と定性調査という言葉を使ってもう少し解説を加えると、弊会が行う感性分析のための調査が、一般的に知られている定性調査と違う点は、少数の対象者を調査する定性調査ではなく、定量調査のように規模の大きい対象者から定性データを収集し、量的に分析するという点です。
多い数の定性データを収集し、量的に分析することで、定性データであっても、裏付けに基づいた戦略立案に役立てることを可能にするのです。
定性データとは 数値になっていないデータが「定性データ」です。言葉や文章、写真、動画、映像などが「定性データ」です。 これに対して数値データが「定量データ」です。売上高、従業員数、認知率、購買率などが「定量データ」です。
参考:定性調査とは(定量調査との違いと実施するポイント)|digmar
インサイトとは
インサイトとは、英語で洞察、見識などの意味で、マーケティングでは、潜在欲求とか、購買欲求のツボなどの意味で使われています。
前出の項目「感性とは」の図<感性の範囲>をもう一度ご覧いただくと一目瞭然だと思います。
「インサイト」は「感性」の一部です。
すなわち、感性マーケティングの中の一部に、「インサイト」は含まれます。
人の感性をデータで取得する方法
感性データを収集する方法はさまざまな種類があります。下記に主な方法を大括りで挙げます。
1.感性評価
《質問法》
調査目的に沿って設問を設計して、回答者に質問形式で調査を行う方法です。一般的な方法が「アンケート」です。また、直接対象となる人々と対話しながら調査員が質問をし、回答者の意見や感じたことを聞き出す「インタビュー」という方法もあります。
《傾聴法》
横から傾聴してデータを収集する方法です。例えば、楽天市場の商品を購入した人のレビューなど各種サイト上に投稿された口コミや、SNSに投稿された商品やブランドに関する主観的な感想です。情報を取得する際は、各サイトの規約に沿う必要がありますのでご注意ください。
《観察法》
対象を観察して調査を行う方法です。例えば、ホームページのユーザビリティテストでは視線計測(アイトラッキング)がよく知られています。
《実験法》
対象に対して検証したいモノやコトを準備して、その反応を調査する方法です。例えば、新製品の試作品を試してもらうことなどです。
2.官能評価
人の感覚(味覚、嗅覚、視覚、聴覚、触覚)を利用して評価する方法です。食品分野においては、お米の食味試験など、おいしさを評価するために用いられています。
3.感性計測
《心理的側面の計測》
代表例はSD法です。「明るい-暗い」といった対立する形容詞の対を用いて、5段階や7段階の尺度で回答者に評価してもらう方法です。
《生理的側面の計測》
脳波や心拍の変動、表情筋(顔の目や口、鼻などを動かす筋肉)を計測して心の状態を測定するなどの方法があります。
《その他の感性計測》
ライブを聴いた人が感動するというような体感をモデル化する感性計測技術も研究されています。その他、物理学・心理学・生理学などの多面的なアプローチとそれらの関係も探求されています。
感性計測の例:株式会社島津製作所YouTubeチャンネル「感性計測システム「HuME」 試用版」より
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講座の中で使う感性(感性データ)は、アンケートの言葉です。言葉を定量化し分析し戦略立案を行うスキルを身に着けられるカリキュラムです。
言葉は、消費者の言葉(アンケートのフリーアンサー)と社員の言葉(仮説の社員意見)の2種類を扱います。
言葉をどのように定量化するのかを理解いただくと、そのスキルを応用して、映像や音楽などの感性データも、定量化して分析する方法をご理解いただけます。
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感性がマーケティングやビジネスでどのように役立てることができるか、事例やデモンストレーションを交えてお伝えをさせていただきました。
セミナー後、資料請求やお問合せをいただきました。また、マーケティング部門や商品開発部門ではなく経営企画に所属する方からもお問合せいただきました。ありがとうございました。
<プログラム概要>
【1】14:00~14:20
壁を突き破るフリーワード分析~収益拡大・組織の活性化~
【2】14:20~15:00
システマティック商品開発・事業開発法~Neo P7・ニーズ発掘から検証までの失敗なきプロセス~
【3】15:05~16:00
感性×AIによるものづくり・サービス開発~AIを活用した感性価値向上~
堀内香枝
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