リサーチをしないで商品企画をしていませんか?
本日は、中小企業で新規市場の開拓や新商品開発の際にユーザーリサーチを行ったことがない経営者の方にぜひお読みいただきたいと思いで書きます。
ユーザーリサーチが国内のすべての企業に定着しているとはまだいえない
一般社団法人 日本マーケティングリサーチ協会の「第43回経営業務実態調査」によると、日本の市場調査業界の市場規模(推計)は、2,147億円(2017年度)のようです。
内訳は、「パネル調査(調査対象者を長期間固定して継続的に調査を行う調査)」が688億円、「アドホック調査(対象者の抽出や設計が1回限りで完結する単発調査)」が1,332億円、「その他」が127億円。
2007年度(1,750億円)から2017年までの10年間は、毎年度上昇しています。
私の肌感覚では、まだ拡大する余地があると感じています。
というのは、中小企業では、新しい市場を開拓する際、その市場のユーザーリサーチ(お客様に対して、意見を聴いたり利用時の状況を観察したりする調査)をすることはせず、経営者のコネクションルートで切り拓く話を耳にすることが多いからです。
その理由は、
1、ユーザーリサーチを行う方法を知らない
2、ユーザーリサーチには高額な費用がかかると思い込んでいる
ようです。
金額より、1の方法を知らないという理由で実施していないことが多いように感じます。
当会の『マーケティング解析士プロフェッショナル 感性 』講座を受講くださった方々の中に、「ユーザーリサーチを行って分析するとここまでわかるのか!」と驚かれる方がかなりの数いらっしゃいます。
失敗しない商品企画は、リサーチが大事
例えば、新規市場に自社商品を投入する際、大雑把にフローを描くと、下図のグレー→グリーン→ブルー→オレンジのフローです。
しかし、グリーンのリサーチの部分を飛ばしていらっしゃいませんでしょうか。
リサーチを飛ばすと、ユーザー(消費者・顧客)のニーズを把握・理解することなく、経験値だけで新商品開発を行わざるを得ないでしょう。
勿論、経験値で商品開発して、ヒットすることもあります。けれども、新商品の開発は1回では終わりませんので、ずっとヒット商品を出し続けることは難しいでしょう。
失敗しないためには、市場調査やユーザーリサーチを行い、ユーザーの必要とするもの・欲しいものを理解したうえで、戦略的に商品開発を行うことが大切です。
しかし、単にリサーチすればよいわけではありません。
聴く相手を間違えると、ユーザーリサーチは失敗する
失敗例というと、言い過ぎになりますが、わかりやすい例として、先月末のニュースに出ていた、経済産業省が行ったアンケートが記憶に新しいです。
民間企業に対する「新元号にどうやって対応するつもりですか」といった内容のアンケートです。
「西暦のみで和暦は使っていない企業」が3割程度、「新元号の準備は完了している企業」が3割程度、「調査中」が1.5割程度、「これから」が2割程度だったそうです。
なんだ案外スムーズじゃないか。
と思ってしまいますが、はたと、一番の和暦ユーザーを思い返してみると、行政文書を作成している、霞が関の中央省庁と各都道府県・市区町村ですね。
ということは、アンケートの対象は、民間企業だけでは実態は把握できないことになります。
他に、明らかに間違いだろうという解りやすい例を考えてみると、
・ベトナムに進出したい企業が、ベトナム国民にアンケートをとらず、今売っている日本の国内で日本人にアンケートをとり、その結果を基にベトナム向けの広告を制作する
・iPhene7の利用体験を聴きたいのに、スマートフォンを持っている人にアンケートをとる
・女性向けの商品開発をするのに、男性の技術者同士が意見を出し合って女性向けの商品を開発する
こんなこと、ありえない!とお思いになるかもしれませんが、案外見落としてしまう点なのです。
ユーザーリサーチ(アンケート)は、聴く前の設計が肝要で、事前準備をするか否かが、成功か失敗かの分かれ道です。
聴く対象をしっかり決めておくと、調査結果を戦略に生かせる良いアンケートを行えます。
リサーチは、まったく知識がないと、何から手を付けてよいかわかりませんが、当会にご相談いただければ、概要をお知らせすることが可能です。
また、当会の『JMLAベーシックパスポート』講座を受講いただくと、体系的にご理解いただけます。
このように、基礎知識を持つだけでハードルは下がり、調査方法の取捨選択ができるようになります。
堀内香枝
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