マーケティングリサーチの役割とは
マーケティングリサーチが必要なシーン
マーケティングリサーチとは、企業のマーケティング課題に対して意思決定を支援するための調査・分析のことです。
マーケティングリサーチが必要なシーンは、多岐にわたります。例えば、
商品開発
・自社の技術で福祉に役立つサービスを開発するため、福祉の現場の困りごとを知る必要がある
・スポーツ観戦の来場者を増やしたい、ソフト面のサービスでそれを実現するためには、どのようなサービスが望まれるだろうか?
商品改良
・競合商品の容器形状は爆発的に売れている、自社の容器形状は受け入れられなくなるのか、もし受け入れられないなら、自社の工場で生産可能などんな容器形状に改良する必要があるか?
ターゲティング&コミュニケーション戦略
・主力商品の売上を倍増させたい、そのために新しく狙うターゲットは誰か?明確にする必要がある
・これまでは一部のターゲットにしかアプローチできていなかった、もっとターゲットを広げるためには、誰にどのような商品価値をどのように伝えればよいか?
価格戦略からマーケティング全体
・業界全体の価格戦略に追従し客離れを起こしてしまった。自社商品の本質価値を再確認し、顧客を呼び戻す必要がある
営業戦略
・営業から入ってくる顧客情報は自分の得意客の意見に偏る傾向にある。既存顧客を網羅した情報収集を行い、営業戦略を検討する必要がある
ブランドマネジメント
・応募が見込み通りではない。自社のブランドが認知されていないのか、それとも伝え方が間違っているのか、明らかにし、次年度に向けて対策を打つ必要がある
・自社の顧客満足度指標をモニタリングし、PDCAを回す
上記のような例は、いずれもマーケティングリサーチを実施しないと、今後の方針が立てられません。
マーケティングリサーチは、目標と現状のギャップを明らかにし、目標に向かう道筋をつくる戦略策定や実行計画・プランニングの意思決定に役立ちます。
リサーチデータを取得する4種の方法
マーケティング活動を成功に導くためには、マーケティングリサーチは必須ですが、リサーチを実施する際は、リサーチの目的を設定することが最も重要です。
そして、目的に応じて適したデータ取得の方法を選択するとよいでしょう。
リサーチデータの取得方法は4種類です。
データ取得の種類
1.質問法
2.傾聴法
3.観察法
4.実験法
データ取得の種類と選択のポイント
1.質問法
アンケートやインタビューという呼び方をされることが多いのが質問法です。
調査を設計する担当やマーケターが、調査目的、調査対象者、回収数、実施タイミング、質問などを設計する方法です。
調査媒体としてどの方法をとるか、2方向で検討するとよいでしょう。
一つは、質問を決めてリサーチをしたい場合: インターネット、電話、郵送、同梱はがき 等
もう一つは、質問をある程度決めて詳細はゆるく(適宜)変えられるリサーチをしたい場合: グループインタビュー、デプスインタビュー 等、ディスカッションやインタビューに触発されて新しい発言から新しい質問を創造しながら進めることができるリサーチ
2.傾聴法
生活者や顧客の自由な発言を、傍らで傾聴しデータを取得する方法です。
知りたいことを知る「質問法」と、知るべき事を見つける「傾聴法」と、特長づけて理解しておくとよいかもしれません。
企業側から仕掛ける場合: 一定期間に設定したテーマについて自由に発言してもらい新たな発見を得る、MROC(Market Research Online Community)やネットグループインタビューという手法があります。
受動的に傾聴する場合: SNSやブログ等で発信されている情報を取得する方法です。
3.観察法
「1.質問法」も「2.傾聴法」も言語情報が主ですが、「3.観察法」は非言語コミュニケーション(ノンバーバル、non-verbal communication)を重視する情報という点が特徴となります。
購買履歴が理解しやすいと思います。民族の文化を観察する人類学や社会学の研究で用いられるエスノグラフィーも観察法です。
入店から購買までの顧客行動を、IoTデバイスの1つである「アイトラッカー」を用いて顧客の視線の動きから分析し、そこにPOSデータを掛け合わせると、棚ごとの買上率なども分析を可能にします。
観察法は「人」による観察か、「機械」による観察か、大きく2方向あります。
・「人」による観察: ミステリーショッパー、エスノグラフィー等
・「機械」による観察: Webログ解析、POS、アイトラッカー等
4.実験法
実験法と聞くと、実験室の中を想像してしまいがちですが、マーケティングリサーチでは、実際のビジネスで顧客となりうる対象に行うフィールド実験を意味します。
受動的な「2.傾聴法」の対局、能動的な「4.実験法」と位置付けると特長を理解しやすいかもしれません。
例えば、あなたが実験したい広告原稿をA、B、C、3タイプ準備しレスポンスの違いをみるテストを行うとします。これはスプリットランテスト※と呼ばれ、実験法の一種です。
※スプリットランテスト: A/Bテストとも呼ばれます。同様の環境下で分割(スプリット)した調査対象者に、複数の素材(広告原稿等)を露出し、どれが最も効果があるかを測定するテスト。
実験場所は、調査会場(CLT:Central Location Test)、店舗、映画館(試写会)、個人宅(HUT:Home Use Test)、折込(新聞)、WEB上、等です。
4種の特徴を頭に入れておくと、マーケティングリサーチを検討し易くなるのではないでしょうか。
実際にどうやってやるの?
どきどき、「どこで調査できますか?」と質問を受けることがあります。
調査は、調査専門の会社があります。
調査会社は、モニター(調査に回答することを前提として自主的に登録している生活者)を保有しています。
マーケティングリサーチのフロー
バターンA: 問題・課題整理、調査設計(自社) → 調査実査(調査会社/その他※1) → 分析(自社/調査会社) → 課題解決(自社)
パターンB: 問題・課題整理(自社) → 問題・課題整理のためのヒアリング、調査設計(※2) → 調査(調査会社/その他※1) → 分析、課題解決ご提案(※2) → 課題解決(自社)(サポート付き※2)
※1・・・「その他」は多岐にわたりますので割愛します。
※2・・・調査含めて※2の業務を外注します。
パターンA
貴方が調査設計を行い、設計した調査内容で調査を(調査会社へ)依頼すると、調査会社が「調査を実施」(実査)してくれます。
実査回収データを調査会社から納品物として受け取り、集計や分析を貴方が行います。
調査会社では分析サービスも行っているところがありますので、分析レポートを納品物に希望すれば、分析結果をレポーティングしてもらえます。
パターンB
パターンBを採用することが多いのは、
・事業戦略を立案する場合
・リサーチが大規模な場合
・リサーチ方法が具体的にはよくわからないが実施する場合
(リサーチの頻度が高くない、社内に人員がいない・ノウハウがない)
などが挙げられます。
会員組織が既にある企業様(例えば、生協の組合員、通販の顧客、自社発行のカード会員等)は、調査会社でいうモニターが、自社の会員にあたりますので、自社の会員を対象に調査を実施することができます。
若干のデメリットは、自社会員に対する調査なので、他社(競合)に関する情報を収集しづらい点が挙げられますが、それ以上に、既に調査モニターを保有していることは、アドバンテージになります。
まとめ
・マーケティングリサーチは、目標と現状のギャップを明らかにし、目標に向かう道筋をつくる戦略策定や実行計画・プランニングの意思決定に役立つ
・マーケティングリサーチを実施する際は、リサーチの目的を決めることが大事
・データ取得は4種(質問法、傾聴法、観察法、実験法)あり、目的に沿った適切な方法を選択する
・マーケティングリサーチの始め方は2パターン、「リサーチの知識を持っている場合は、自分で調査設計から集計・分析まで行う方法がよい」、「人員・ノウハウ・時間など不足要素がある場合は、課題や目的をしっかり設定した後は外注する方法がよい」
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堀内香枝
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