ターゲティングの成功事例
顧客の気持ちをつかんだ企業の価値提供
自社商品のターゲティングはうまくいっていますか?
「STP」を成功させている商品やサービスまたは企業は、業績も良いというプラスの相関関係にあるようです。
*STP
S: セグメンテーション(Segmentation)、市場の細分化(ニーズのグループ化)
T: ターゲティング(Targeting)、自社が狙うのに最も魅力的な市場(狙う顧客)を決める
P: ポジショニング(Positioning)、設定したターゲット市場における自社の立ち位置(優位性)を決める
羊羹(ようかん)で有名な和菓子メーカー「虎屋」(東京・赤坂)は、百貨店に出店しているがスーパーマーケットでは販売していないですよね。販売間口を狭め、特定顧客のニーズに応えた高品質・高価格な和菓子を提供することで、「老舗ブランドとしてのステータス」維持に成功しています。
SPA※の「ユニクロ」(ファーストリテイリングの子会社)は、ベーシックで機能的な普段着を安く買えるところがないという消費者の不満に狙いを定め、高品質なカジュアルウエアを手頃な価格で提供し大成功しました。
※SPA: 企画・素材開発・素材調達・生産・物流・販売までを一貫して行うアパレル製造小売業
高級スーパーの「成城石井」は、大量販売のスーパーマーケットにはない高品質な食料品の品揃えが豊富で、裕福な主婦層をターゲットに成功しています。
STPに成功しているポータルサイト
ポータルサイトの中でも特定のテーマに特化して成功している企業があります。
葬儀・墓石・仏具などの事業者とお客様をマッチングさせるポータルサイト「いい葬儀」「いいお墓」「いい仏壇」を運営する「株式会社 鎌倉新書」です。
社名の通り、創業当初は印刷業で、それも大変ニッチな仏教業界の仏教書や仏具関係の書籍を手掛け、その後、仏教以外の供養業界向けの印刷物を取り扱うようになりました。
つまり、葬儀業社や墓、仏壇など供養業者のネットワーックを築く中で、知識やノウハウも蓄積されたことでしょう。
一方で、社会の変化として、戦前、檀家と寺の関係が成立していた時代から、戦後、交通の発達による民族大移動時代、産業構造の変化、核家族化などの要因から、従来の葬儀・供養の習慣が薄れ、死の場面を迎えたときに何をすればよいか、知識を学ぶ経験の場が激減しています。
そこに着眼し、知識・ノウハウの情報発信とサービスの提供、必要な人に必要なサービスを届けるマッチングサービスを行う手段として、これから将来を見据えると、ポータルサイトが最適だと経営者は考えたのでしょう。
ポータルサイト市場というと、GoogleやYahoo!など大手企業も多数存在しますので、ターゲティングとポジショニングは必須です。
ポジショニングは、当事者(葬儀社)ではない第三者として、葬送文化や風習などの情報価値の提供ではないでしょうか。
測定可能な情報を使う
STPの目的は、変化する市場や多様化する顧客ニーズ、競合の変化、様々な要因により変化するビジネス環境において、自社が優位に戦える方法を検討することです。
セグメンテーション
まず、「戦う市場はどこか」大きな枠組みを決めます。
たいていは、扱う商品・サービスを括る市場と考えれば問題ないです。
ケーキを作っていればスイーツ市場、食品を販売しているスーパーマーケットであればスーパーマーケット市場という具合です。
「戦う市場はどこか」を決めたら、その市場を細分化します。
細分化する軸は、消費者をターゲットにする場合は、下記4種が一般的で、その中から2軸の組み合わせを決めます。
組合せは1つだけでなく複数でも構いません。
人口動態変数: 性別、年齢、家族構成、収入、職業など
地理変数: 地域、気候、文化、宗教など地域特性
心理的変数: 人の感性、ライフスタイル、価値観など
行動変数: 商品の購買、サービスの利用、顧客行動など
※「心理的変数」に関する参考:事業戦略に感性分析はなぜ必要か
測定可能な情報(感性情報も測定可能な情報に変換可能)を選ぶと、市場規模の計算や将来予測が可能になります。
セグメンテーションは細分化するところまでです。
ターゲティング
大きな枠組みを細分化した中から、自社が狙う小さい枠の集合体(ターゲット)を選択して決めます。
決める基準は、「顧客の数(市場規模)」「競合の存在」「成果の測定可能性」などを考慮するとよいでしょう。
例えば、あるスイーツ屋が、スイーツ市場において、価格軸(高価格から低価格)と性別(男女)でセグメンテーション(細分化)し、「高級」(価格軸)スイーツを「男性」(性別)向けに作るターゲティングを行う、という具合です。
価格帯も性別も、調べようと思えば調べられるので測定可能といえます。(男性向け高級スイーツ屋があるなら、ニッチで話題になるかもしれませんが、売上の成長性は疑問ですね。)
ポジショニング
ターゲット市場(自社が狙う小さい枠組みの集合体)における自社の立ち位置を明確にします。
ポジショニングは、企業目線で自社の優位性を考え、立ち位置を決めます。強みを発揮できる位置取りを行います。
例えば、図の横軸を「こだわり(素材⇔デコレーション)」、縦軸を「健康⇔デザート」とし、図右上(健康をテーマに、生産者から直接仕入れる素材にこだわったスイーツを提供する)を自店の売りにするという具合です。
市場や顧客目線で行うセグメンテーションおよびターゲティングと、企業目線で行うポジショニングは質が違うのが留意点です。
まとめになります。
STPとは、
S: セグメンテーション(Segmentation)、市場の細分化(ニーズのグループ化)
T: ターゲティング(Targeting)、自社が狙うのに最も魅力的な市場(狙う顧客)を決める
P: ポジショニング(Positioning)、設定したターゲット市場における自社の立ち位置(優位性)を決める
分析の手順は、
S→T→Pの順に一つずつがっちり決めて順に進めなければならないかというと、そういうわけではありません。
Pがすぐに決まる場合は、Pを決めておいて、SとTを考えるという順でも問題ありません。
STPを行うからこそ、ビジネスを有利に進めることができるのです。
STPのトレーニングは、『JMLAベーシックパスポート』
セグメンテーションの心理的変数に関する感性分析は、『感性マーケティング』
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参考:「3Cとは、SWOTとは」「5F(ファイブフォース)分析とは」「3C、4P使いこなしていますか?」「営業や提案をする立場になる人が必要なスキル」
堀内香枝
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