『感性価値』を生む『感性マーケティング』
近年、「商品がコモディティ化してしまった」とか、「コモディティ化からの脱却が必要だ」というような文章をよく目にします。
しかし、どうすれば脱却できるのかという具体論が語られていないことが多いと感じます。
それは、コモディティ化がなぜ起きているのかという事実が分析できていないからだと推測します。
今回は、コモディティ化から脱却を目指す一助となる「感性マーケティング」に関してお話します。
「もの作り」ではなく、感動、共感を生む「もの語り」へのシフト
コモディティ化が起きる大きな要因は、その商品が「ただ役に立つ=モノとして役に立つ」商品でしかなかったことにあります。
現代社会は成熟し、必要なものは何でもある”もの溢れ”の時代です。
ただ役に立つ商品では人々の心を満たさず、意味を持つ商品でなくては売れない時代です。
コモディティ化を防ぐためには「モノの充実」ではなく、「ココロの充実」を目指す必要があります。
「ココロの充実」を目指す事が理解され、商品やサービスの中に具現化されると、人にとって「意味がある」として迎え入れられ、それらの商品やサービスは長く愛されるのです。
世界のセイコーウオッチも、世界で売れるためには「機能的価値」だけではだめで、ストーリー(もの語り)やフィロソフィ(哲学)といった「感性価値」をいかに伝えられるかがポイントだと言ってます。
旧来、商品というものは作り手のこだわりで作られてきました。
現在もそのような商品で世の中に認められている優れた商品もあります。
それらの商品は一見作り手のこだわりが受けていると捉えられがちですが、実はその裏には、作り手のこだわりや生き様に感動・共感したからという使い手側の「感動・共感」というものが存在するのです。
自分が憧れとするライフスタイルを表現している商品だから、自分が持つことによってその思いが具現化できるという共感です。
世界中でヒットし数多く利用されている商品やサービスは、必ず「感動や共感」を生み出すことに成功しています。
「共創」による「感性価値」創造
企業で利用される「椅子」(オフィスチェア)のデザインや形状にしても最近はかなり変わってきていると思いませんか?
まさに「機能価値」だけではなく、人の「感性価値」(※)を追求した結果と言えるでしょう。
(※)感性価値とは:生活者の感性に働きかけ、感動や共感を得ることで顕在化する価値(経済産業省)
単なる「物をつくる」行為は、作り手の一方的な<「モノの充実」≒「機能価値のみ」>を使い手に届ける作業といえます。
「感性価値」を生み出すためには、使い手の「こだわりや興味」を理解し、それを満たす、充実させるものを生み出し届けるという人の感性に訴えかける「もの語り」が必要になるのです。
したがって、企業から提供する価値は、「機能価値」+「感性価値」の2層を常に心がけることが大切といえます。
現代社会は成熟し、人々の感性も多様化しています。
世の中全ての人に売れる商品など存在しないと割り切り、ある一定の人々の「こだわりや興味」を理解し、そこに自分たちのこだわりや思いをのせてモノを作り上げるという「共創」の考え方が重要です。
「ココロの充実」を創出する『感性マーケティング』
そもそも、「感性」とは何でしょうか? それは「人間が外界からの刺激を五感で判断し表現する能力」です。
人は、生まれ育った環境や、生活環境は様々です。
ですから、外界からの刺激【光(文字、動作、画像など)、音波(言語、音響、音声など)、力、物質(物体、接触、運動など)、温度(生物、料理、飲み物など)など】に対する反応・判断がそれぞれ異なるのです。
『感性マーケティング』は、世の中の人々が困っていることや実現したいことの心理を理解するとともに、自社が実現可能な対象(ターゲット)を見極め、自社が利益を出し続けることができる(かつ、社会に貢献し続けることができる)仕組み作りを行うためのマーケティング手法です。
皆さまも「感性マーケティング」に興味を持ってみてはいかがですか。
必ずご自分のお仕事に活かされますよ。
森田 広一
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