「中ぐらい」とは平均?中央値?
「中ぐらい」ってどれくらい?
このあいまいなことばについて、今日は考えてみたいと思います。
「ふつう」「中ぐらい」という日本語
知人(教師)から聞いた笑い話があります。
知人が奥様と道を歩いていたら、教え子である学生さんたちが前方から歩いてきました。
すれ違った後、学生さんから
「先生、奥さん“ふつう”だね」と。
知人は、
「ふつう?(怒)」
学生さん、
「きれいだね、ってこと」
(ああ、そういうことかと知人は納得)
別の例では、
学校での算数の成績を親に報告する子供、
「算数の成績はクラスの中で“中ぐらい”」
親、
「中ぐらいね」(真ん中くらいね、なら、いいわ)
子供の内心、
(真ん中からすごく下じゃないから、“中ぐらい”といっておけば深く追求されずに済むだろう)
いかがでしょう、この会話。
「中ぐらい」は、「中」に「ぐらい」がついているので、その範囲はゆる~い。
「ふつう」も、人それぞれの主観的な「ふつう」。
正確にはどの程度、という議論とは無縁の言葉ですね。
あいまいが和む日常会話と正確さが求められる仕事での言葉の使い分け
「ふつう」も「中ぐらい」も、日常会話の中ではとても便利。
あなたの意見聞かせてと言われて、評価するのに困ることってありますよね。
例えば、圧倒的立場の高い人から、あなたの意見は?と聞かれ、緊張のあまり何も言えなくなるのを、なんとか発言しようとするとき。「きれいだね」と友人の奥さんを褒めると波風が立ちそうなとき、いろいろと配慮し過ぎる人ほど、便利な言葉ではないでしょうか。または、先ほどの子供のいいわけのときに使うのも便利? 結局バレることだけれど、その場は逃れられかもしれません。
普段の会話ではよいでしょう。
一方、仕事となると別です。
上司から、大事なお客さんへ訪問する前に下調べを依頼された部下が、上司へ報告する際、
「AとBは“ふつう”みたいなので、お客さんは気に入ってくれると思いますよ」
「ふつう」だの「中ぐらい」だのと報告したら、議論にならないと一蹴されてしまいます。
客観的な数字で示すか、定義を設定したレベルの値を示す必要があります。
アンケートでの「中程度」の聴き方
満足度評価やイメージ調査、意向調査の場合、5段階で評価してください、という調査票を見たことがある方はいらっしゃるでしょう。
5段階評価で、あなたの評価はどのレベルですか?
この場合、真ん中の評価を、どう表示するのが適切でしょう。
正しい表示は、「どちらともいえない」です。
5 そう思う
4 ややそう思う
3 どちらともいえない
2 あまりそう思わない
1 そう思わない
上でも下でもない、良くも悪くもない、中間を「どちらともいえない」と表示します。
「ふつう」を上々だと思っている人は、この中には「ふつう」がないので、「ややそう思う」か「そう思う」に回答することになります。
「中ぐらい」は低レベルをにごした表現だと思っている人は、「あまりそう思わない」か「そう思わない」を回答することになります。
加えて、判断できない人に評価してもらいたくない場合は、下記のように、「判断できない」という選択肢を加えます。
・そう思う
・ややそう思う
・どちらともいえない
・あまりそう思わない
・そう思わない
・判断できない
このように、リサーチやインタビュー・ヒアリングの際は、得られた回答データを次の分析に使用することが多いため、事前に言葉を吟味したり定義してコンセンサスをとりやすい表現にしておきます。
普段何気なく使う日本語は、それはそれで趣があり、愛嬌もあり、息が抜けますから残しておきたいですね。
しかし、仕事では、正確に伝わる情報でないと判断に困ります。言葉の選び方、使い方は、伝わる、理解されやすい言葉に置き換えましょう。
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