★感性マーケティングブログ★ “触覚”とマーケティング
人間は、『五感』という素晴らしい機能を保有しています。
その『五感』によって外界からの刺激を判断する能力を『感性』と呼びます。
桜の花を好きな人もいれば、バラの花が好きな人もいる。その差を生むのが『感性』の仕業です。
『触覚』も『五感』の中の一つの機能ですから、人の判断、行動に影響を与えていることは明白です。
実はまだまだ未知の世界【触覚】
人間の五感のうち【視覚】【聴覚】【味覚】【嗅覚】は、それぞれ特定の場所にある器官により感じ取られる感覚ですが、【触覚】だけは全身の皮膚で感じ取られる感覚です。
このように改めて聞くと【触覚】が人間に及ぼす影響はとても大きいものと感じませんか。
しかし、残念なことに【触覚】は他の4つの感覚に比べて、未解明で謎の多い感覚なのです。【視覚】や【聴覚】は、測定も容易で生活を行う上で根幹にかかわる感覚なので早くから研究が行われた。また【味覚】や【嗅覚】も『食べる】という生きるために必要な感覚として、測定方法も進んでいます。
【触覚】だけがなにやら不可解な感覚として学術的研究の対象から外されてきたのです。
『触れる』ことの持つ影響の大きさ
しかし、近来【触覚】という感覚が様々な分野で着目され、研究が進み始めています。
例えば、生まれたばかりのサルの子供を、【触覚】から切り離して育てると死んでしまうということです。つまり、母親と触れさせない、代わりの育て親としての人とも触れさせないということを行うと、ミルクをちゃんと与えても、母親をガラス越しに見えるようにしてもだめだそうです。
他の動物や人間でも温かいスキンシップに恵まれなかった子供は、性格に問題が出やすいといわれていますね。
『きさげ』という技術
人間は皮膚の感覚というのも非常に優れていて、物体の表面の1μmの粗さも検知できるそうです。
この優れた感覚を活かした『きさげ』という技術があります。金属の表面を人間が刃先のある工具で平らにしていく作業のことを言います。
現在の技術力を持っても、機械で平面を削って平らにしても、人間が触ると微妙な凹凸を感じられ、その凹凸を人間が『きさげ』という技術により、更に平面の精度を上げることができるそうです。
コミュニケーションと『触覚』
人間のコミュニケーション能力に、大きな影響を与えている感覚があるそうです。そう、【触覚】です。
日本人は、世界の中でも『五感に鋭敏な民族』と言われています。四季があり、自然に恵まれた風土に育ったDNAは、五感が磨かれてきたのかもしれません。
日本人はシャイだといわれていますが、それには訳があります。
【視覚】や【聴覚】【味覚】【嗅覚】は、特定の感覚器官で外部からの刺激を捉えていますが、【触覚】は冒頭で書いたように、体全体の皮膚により、外界からの刺激を捉えています。
よく、『皮膚感覚』という言葉が使われますが、いわゆるセンサーが身体中に存在しているがゆえに、外部からの圧力を身体全体で感じてしまうのです。
日本人がシャイなのは、この【触覚】が鋭敏だからといえます。
良いのか悪いのかは、意見が分かれると思いますが、五感に優れていることは誇りに思ってよいことでしょう。
マーケティング上も重要な『触覚』
【触覚】は、思わぬ力も持っています。
例えば、ガラスを爪でこする音を聞くと、自分が触っていないのに爪の先に違和感を覚えたり、テレビで自動車が急ブレーキを踏む映像を見ると、思わず足に力が入ったりしたことがあるでしょう。【触覚】は非接触でも人間に刺激を与えるのです。
また、ある実験で、同じ文章を重いクリップボードに挟んで読んでもらったグループと軽いクリップボードに挟んで読んでもたったグループに分けて、それぞれ感想を聞くと、重いクリップボードに挟んで読んでもらったグループのほうが、真剣な評価を行ったそうです。
これは、科学的に『人間は、物理的感覚により抽象的な概念を把握する』ということの検証結果だそうです。
このように【触覚】は、人間に大きな影響を与えます。
ふわふわした感覚が好きな人もいれば、ツルツルした感覚が好きな人もいる。
湯気を見れば、温かい心が生まれ、雨を見れば物悲しい心になる。
商品も広告もどのようなターゲットを意識するかによって、『抽象的な触覚体験』が売れ行きを左右したりするといえます。
今後、是非参考にしていただき、よきコミュニケーションが取れるようにしてください。
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森田 広一
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