KKD(経験に基づく経営)とDDM(データに基づく経営)
KKD経営の弊害
KKDとは
KKDとは、K(経験)とK(勘)とD(度胸)の頭文字です。「経験・勘・度胸」による経営の意です。
仕事にはスピードが求められます。自分自身も早く結果を出したいと思います。そのため様々に存在するはずの代替案や不明確な要素を無視して、安易に自身の経験や勘により、物事や戦略を判断してしまうということが、多々あるのではないでしょうか?
しかしそのような場合、目先の結果に囚われ過ぎて、自社にとって重要なことを見落としてしてしまう機会損失のリスクも出ます。
日本には優れた企業を創設した、数多くの優秀な先人たちが存在します。
松下幸之助さん(松下電気器具製作所(現・パナソニック)創業者)や安藤百福さん(日清食品創業者)、本田宗一郎さん(本田技研工業(通称・ホンダ)創業者)など、今の日本を支えるような企業を創り出した人たちです。
彼らは、自分が感じる社会の状況変化をいち早く察知し、必要とされる商品を生み出し、一代で今の会社の基盤を創り出しました。自分自身の経験により社会状況から感じることを、自分自身で判断し、いばらの道を度胸をもって乗り切り、世の中に認められる商品を生み出していったのです。
素晴らしい先見性と能力だと感じます。
しかし、現代社会はモノがあふれ、顧客ニーズは多層化・多様化し、それぞれの人の考え方や価値観が個々に違い、判断も異なります。OneToOneの考え方が必要な時代と言われるゆえんです。
そのような時代に、企業の方向性や損益にかかわる事項や新商品開発を、一人の経験や勘だけで判断し、周りの評価や不安をも無視して度胸だけで進めることは不可能です。
DDM経営への進化 事実の把握と因果関係を分析する能力
DDMとは
DDMとは、Data Informed(データに基づく) Decision Making(意思決定)の頭文字です。社会一般に広く知られている名称ではなく本記事の中で使用した複合語です。データに基づく経営の意です。
最初にお断りしておきますが、KKD経営は必要です。
ですが、それだけでは今とこれから先の経営は難しいので、DDMを加えて進化する必要があります。
では、どうすればよいのでしょうか。
1.事実の把握
複雑な現代社会に受け入れられる商品開発や戦略立案には何より事実を把握することが必須です。
2.因果関係の把握
そしてその事実を整理し事実を引き起こしている要因、背景を分析する能力が必要です。
進め方について、下記Step1~4が大まかな工程になります。
Step1 事実の把握
- どのような商品やブランドがもてはやされているのか?
- どのような商品は受け入れられず売れていないのか?
など、事実(実際の現象、実態)を把握することが第一歩です。
Step2 因果関係の把握
- そして、それらの事実がどのような人にどのような理由で受け入れられているか?
- 目指していることは何か?
など事実を取り巻く因果関係を整理・分析し、把握します。
Step3 把握した情報(分析結果)の解釈
情報の整理と分析に基づき、今の社会や数年後の社会に必要とされる共通する/本質的な「価値」を見出します。
Step4 「社会・市場・顧客」と「自社」をつなぐ提供価値を創る
Step1~3を踏み「社会・市場・顧客」が求める 「何?」 が明確になったところで、「自社・自社の事業・自社の技術」とつなげます。これが「自社の価値を顧客に提供し喜んでいただく」ことです。
Step1~3が実は非常に大事だということは、やってみて初めて実感できることでもあるので、面倒だから省いてしまうことは、案外頻繁にあることなのです。
「Step1 事実を把握する」取り組みやすい4ポイント
第一歩となる「事実を把握する」について、費用をかけずに取り組みやすい4つの方法をご紹介します。
事実を把握する 取り組み方法1 今使っている人(利用者)に聴く
自分の会社の商品カテゴリーを利用する人々に、今利用している商品やその理由を聞くなど、取り組みやすいところから始める。
事実を把握する 取り組み方法2 傾聴する
今やネットの時代です。ネットに流れる自社の商品にまつわることや、今どきの人の考え方などを収集する。
事実を把握する 取り組み方法3 観察する
利用者の購入方法や選択手順を、リアルに観察する。店頭や会場などで人々の動きを観察する。
事実を把握する 取り組み方法4 試してもらう
開発予定商品をユーザーに試していただく。
上記の方法が取り組みやすいと思います。自分たちでもできますし、予算があれば専門の調査会社に依頼することもできます。
そして、把握した事実を分析する方法として多数存在しますが、傾向を簡単に把握できる方法をご紹介します。
把握した事実の傾向分析 方法1 単純集計
単純集計は、言い換えるとランキングです。どの商品の売り上げが一番かなどを数値をもとに傾向を把握できる最も取り組みやすい分析手法です。
把握した事実の傾向分析 方法2 クロス集計
クロス集計は、例としては、「年齢」と「健康状態」の関係を傾向把握するといったように、1項目だけでランキングを把握するだけでなく、年齢ごとに健康状態はどのように変化していくのか? 10代は「痩せやすく太りにくい体」から、加齢とともに変化し、50代は「痩せにくく太りやすい体」になるなど、2項目間の関係がどのような傾向かを把握できる便利な分析手法です。
マーケティングとデータは切り離せない関係性
更に、多変量解析(因子分析やクラスター分析、重回帰分析、数量化理論など)高度な分析手法があります。つまり、集められない情報はほとんどなく、分析できないデータもほとんどないので、どんどんチャレンジしていけます。複雑な要素が渦巻く現代社会ですが、必要な情報を収集し、的確に分析すると、KKD(経験・勘・度胸)よりさらに進化できます。
DDM(データに基づく意思決定、データに基づく経営)は、仕事を進めていく上で、また、マーケティングの実務を遂行する中で、学ぶべきことはとても多くあります。古くからの教えにも学ぶことがあり、近代において考え出された学問や理論もどんどん学び吸収していくことで私たちは進化していけるのだと思います。
マーケティングを遂行する上でデータは欠かせません。
しかし、データは大量にあるのでデータに振り回されて本質を見失いがちです。そうならないためには、マーケティングの基本的なフレームワークを活用するのが大変有用です。
マーケティングの基礎にご興味をお持ちにの方は、「JMLAベーシックパスポート」をぜひご覧になってみてください。
必ずご自分のお仕事に活かされますよ。
※マーケティングの基本フレームワークについて詳しくはこちらをご覧ください。
3C、5F、SWOT、STP、4P、【真のデジタルマーケッターとなるために】シリーズ
※調査・リサーチに関して詳しくはこちらをご覧ください。
リサーチの役割、アンケート調査10のポイント(シリーズ)
堀内香枝
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